電子帳簿保存法でDX促進

経理業務や税務申告におけるDXを促進する制度の1つとして、電子帳簿保存法の要件が緩和されました。

改正の狙いは、経理を電子化することによる「生産性の向上」と「テレワークの推進」、さらにクラウド会計ソフト等の活用促進による「企業の記帳レベルの向上」とされています。

もちろん国税庁が推進しているので、国税庁も含め生産性の向上、脱税阻止という目的もあるのだと思います。

DXが進むと、企業にとってどんなメリットがあるのかを見てみましょう。

①パンデミックに備えて、場所に囚われない働き方の促進

もし紙書類が当たり前になっていたら、領収書原本を経理に提出するために、郵送したり、出社をしないといけません。
場合によっては300円の経費処理のために、500円の電車代がかかったなんていうバカバカしいことも発生します。
また、経理担当も紙書類を処理するために出社しないといけません。

DXが進んでいれば、自宅からスマホなどを使って画像をアップロードするだけです。

②業務改善、生産性の向上

紙書類の場合、ファイリングの手間が発生します。
ファイルをキャビネから取り出して、あとで探しやすいようにインデックスをつけて保存する、といった作業です。

DXが進んでいれば、そのようなアナログな作業は不要で、アップロードした画像やPDFファイルを所定のフォルダに保存するだけです。

③ペーパーレス化による、オフィスや倉庫賃料など固定費用の圧縮

電子帳簿保存法では、7年間(もしくは10年間)の帳票の保管義務があります。
もし紙書類が当たり前になっていたら、捨てられない紙書類が毎月・毎年溜まっていきます。
帳票のために、大きなキャビネットが必要になったり、場合によってはオフィスでは保管スペースが取れず、倉庫賃料や書類の輸送費が発生します。

DXが進んでいれば、すべての紙書類をスキャンして電子データ化した後に、紙の原本を捨てることができます。
オフィスや倉庫賃料などの固定費が増え続けることはありません。

このように考えると、紙文化が当たり前になっていた企業も、電子帳簿保存法とDXの波に乗って、思い切って紙書類から電子データに移行してはいかがでしょうか。

電子帳簿保存法対応でペーパーレス化する際の注意事項

しかし、矢継ぎ早にDXしてペーパーレス化すればいいというものでもありません。

電子帳簿保存法は、いくつかの保存要件が規定されています。法律で定められた方法で保存しないと法令違反になってします。
そして、電子帳簿保存法に則した電子保存のために新たに加わる業務もあります。

その一つとして、電子帳簿保存法の電子取引、スキャナ保存においては、取引先名・取引日付・取引金額を検索できるようにすることがあげられます。

システム化をしなくとも、Excelでリストを作成したり、ファイル名に取引先名・取引日付・取引金額を含む形でリネームする等の方法も国税庁から紹介されておりますので、システム化だけが電子保存の解決方法ではありません。

しかし、手作業でのリスト作成やファイルリネームは、それなりに手間がかかる作業になりますので、作業にかかる時間や人件費を考慮した上で検討する必要があるでしょう。

さらに注意すべきは、システム化すれば手間がかからないということでもありません。

電子帳簿保存法対応のためにシステム化したものの、システムの運用に負担がかかってしまっては本末転倒です。

社内でシステムが正しく運用されるように、社内に運用ルールを定め、運用ルールを徹底させなければなりません。電子帳簿保存法は複雑な法律です。電子取引とスキャナ保存ではルールが異なる部分もあり、混同して間違った解釈をしてしまうことは珍しくありません。正しい法制度の理解が必要になり、社内に運用ルールを守らせることは決して簡単とは言えないでしょう。

電子取引は義務化されているため、すべての企業が対応しなければなりませんが、スキャナ保存の導入は任意となるため、負担のかからない範囲で部分的に導入するというのも選択肢としては検討する価値はあるかもしれません。

電子帳簿保存法の対象帳票というのは、かなり広範囲です。こちらの記事でも、対象帳票について解説していますのでご確認ください。

電子帳簿保存法対応で電子保存をする前には、電子帳簿保存法の対象帳票をまず確認し、自社の対象帳票のどれが該当するかを棚卸し、次にそれらを電子保存の業務フローを見直すという手順を踏んでから進めるのが良いでしょう。

AIで解決するという方法もある

ここまでの説明でもご理解いただけたかと思いますが、電子帳簿保存法に対応するということは、新たな業務が増えることでもあります。

電子保存をシステム化によって実現しても、満足するDXにつながるとも限りません。

DXを実感できる電子帳簿保存法対応として、AIを活用したシステムを利用するという方法もあります。

現在は、AIによって、PDFや写真から、取引先名・取引日付・取引金額を自動で読み取り、検索できるようにデータベース化してくれる製品もあります。

これらの中には、AIが帳票を自動で仕分けして保存してくれたり、取引先名・取引日付・取引金額だけでなく、全文検索で帳票を探しだすことを可能にする製品もあります。電子データは保存した後に、どこに必要な情報があるのか埋もれてしまって活用できないという悩みはよくあります。全文検索のような機能があると、うろ覚えであっても文書内に記述されたキーワードで書類を探すことができるため、過去の文書を有効活用しやすくなります。

電子帳簿保存法は税務調査を円滑に行うことが目的の法律でもあるため、企業のメリットを実感する機会が多いとは言えません。

AIを利用した電子保存のシステムを利用することで、自動化により業務効率だけでなく、過去の帳票資産の活用という新しいメリットを生み出すことができますので、AIを搭載したシステムを候補に入れてみるのもいかがでしょうか。

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Dencho-ho.info 編集部

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